「わからなさ」を楽しむ数学教師の挑戦。

主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)を教師も実践!公立定時制高校の教務主任です。

【授業実践】「演繹」から「帰納」へ。三角形の重心を自ら学ぶ。【数学A】

数学の授業は基本的に「演繹」的だ。

 

教科書はスモールステップに構成されている。

理論が丁寧に積み重ねられていく。

 

逆に,一部の生徒だけがつまずき,嫌な思いをする。

教師が丁寧に教科書を教える授業では,生徒は真摯に「わからなさ」と向き合えないのだ。

 

そこで,授業を「帰納」的にデザインした。

課題を通して,「わからなさ」から「納得解」を引き出すためである。

 

数学Aにおいて,次のような実践を行った。単元は「図形の性質」である。

授業の指導案は次の通り。

 

【本時の目標】

重心を理解する。

【授業デザイン】

導入:前時で生徒がまとめた内容を生かし,内心について復習をする。

展開:①重心に関する問題を解く。

   ②三角形の折り紙で重心を見つける。

まとめ:重心について,自分でまとめる。

 

 教科書の順番通りに授業を行うと,「教師による重心の説明(証明)⇒重心に関する問題演習」といった流れになるだろう。

 

ここで,「教科書等を活用しながら重心に関する問題演習⇒三角形の折り紙で重心を見つける」といったように授業の流れを帰納的にデザインした。

 

重心に関する基本的な性質について,教師からは説明をしない。

生徒が問題に取り組む中で,「わからなさ」に向き合い,重心の内容を理解できるようにした。

 

また,平行や相似などの基礎的な内容の知識・技能の習得も重要となってくる。

 

重心の理解とともに,より基礎的な内容の「学び直し」もできるようにした。

 

展開①の1において,教科書を活用しながら,重心の性質を学んた。

取り組んだ問題は次のようなもの。

 

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ある3人グループでは次の対話が見られた。

 

生徒A BDとDCは同じ長さ。

生徒N あー。

生徒A BCの真ん中の点をDとして,AからADを引いて,全部同じことをするんよ。∠Aの線と∠Bの線と∠Cの線引いて,合わさることがGなんよ。(生徒Nと生徒Yを見る。)

生徒N え?

3人  (笑)。

生徒Y AGとGDはいっしょじゃないん?

生徒A ちがうちがう。∠Aから辺BCの真ん中の2等分線に線ひっぱって,BからACに対して,同じことを・・・

生徒Y あー。

生徒N あーそういうことか。

生徒A 次,∠CからABに対して引いたら,全部交わることがGですよと。

生徒Y 外心は?

生徒A 外心はただ,辺から垂直2等分線引いたらなりますよやけど,あれはあれやん。辺から角に向けて,線引いてる。外心は・・・

生徒N あーそういうことな。

 

問題を考える過程で,重心の性質を理解しようとしていることがわかる。

重心だけでなく,外心にも考えが広がっていた。

教科書をもとに重心の証明を考えている生徒もいた。

 

いずれの場面でも生徒が「わからなさ」と向き合うことができたのだろう。

「わからなさ」と向き合うことで,個人,グループ,全体で対話が生まれ,自分たちの力で「わかる」につながるのだ。

 

帰納」的に授業をデザインして、「わからなさ」から納得解を考える。

意識して来年度もやっていきたい。