【授業実践】対数関数のおもしろさ。pHとつなげる教科横断。生徒の「なんでなん?」に注目。【数学Ⅱ】
今回は数学Ⅱ、対数関数の内容。
対数関数の導入として、授業を行った。
授業デザイン(指導案)は以下の通り。
【導入】
1.指数の復習問題を解く。
【展開】
2.雑誌『ニュートン』の記事から、対数(log)がpHやデシベルに使われていることを学ぶ。理科(化学との教科横断)
3.「初日1円、1日後2円、2日後4円と倍々に増えていく投資案件。512円もらえるのは何日後か。」を考える。
4.対数関数の計算やグラフを考える。
5.「16×64の計算をlogを使って上手に計算せよ。」を考えることで、対数の有用性を学ぶ。
【まとめ】
6.本時の内容で自作問題(数学ラブレター)を作成し、交換して解き合う。
生徒の学びを見ていこう。
展開の2.では、生徒はpHという文字を見るなり、生徒は口々に叫び出した。
「フェノールフタレインや!」
「いや、リトマス紙か!」
「あの色変わるやつな」
「アルカリ性やっけ?」
化学の内容も教科横断的に学び直しをできていてうれしい限り。
次に展開3.にて、生徒はlogの意味を学んだ。
そして、展開4.の問題を考える中で、ある生徒がつぶやく。
「なんでpHってーlogなんやろ?」
この生徒はニュートンの記事に書いてある式を見て、ずっと考えていたのだ。
この一言を聞いたとき、私は授業の進度を気にするあまり、そのまま通り過ぎてしまいそうになった。
しかし、「問題が解けることより、生徒のわからなさの方が大事だ」と考え、
「じゃあ、pHの-の意味を考えてみようか」と全体で生徒の「わからなさ」を共有してみた。
すると、ある生徒が、「喋っていい?」と笑顔で、前に行って説明を始めた。
「-がついてるから小さくなるってことやろ?」
「指数の-乗ってちいさくなるやん。」
「指数を外に出せるのがlog。」
「桁数がわかるから、pHもわかるねん。」
「前の問題をつなげて」
「指数とつなげて」
「logの概念をつかんで」
自分なりの解釈をどんどん説明する。
その話を聴く周りの生徒たちは、言葉を自分なりに租借しながら考えている。
とてもいい空間。
「あーなるほどな!」
pHの意味が理解できたようだ。
「pHの-logのマイナスの意味がわからない」
という数学の本質に近づく「わからなさ」を共有し、他の生徒の知的好奇心を呼び起こすことができた瞬間だった。
「どうやるん?」も大事だが、「なんでなん?」という本質に迫る「わからなさ」は生徒の学びを加速させることがわかった。
次の問題で、
「さっきのpHでやったみたいに・・・」と
ここで共有した内容を生かして、説明をしている生徒もいた。
終盤、展開5の「16×64の計算をlogを使って上手に計算せよ。」では、教室がとても静かになった。
生徒がどんどん学びに入りこんでいけたのだろう。
しかも、ただ技能的に計算をする問題ではない。
logの有用性を自分なりに掴む問題だ。
「あ!そういうこと!」という生徒の発見のもと、この問題を通して次の2つのことがわかったようだ。
➀logは数を小さくできる
②かけ算を足し算できる
どちらもいい気づきである。
教師が説明をしなくても、今回のような「よい課題」があれば、生徒は自分たちの力でlogの有用性をつかむことができると学んだ。
身の回りの事象とつながりやすい、指数・対数は楽しい。