「わからなさ」を楽しむ数学教師の挑戦。

主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)を教師も実践!公立定時制高校の教務主任です。

【授業実践】「わからない」と言えるようになるには?【算数・数学の授業】

ウォルト・ディズニーの名言集に次のものがある。

 

All you’ve got to do is own up to your ignorance honestly, and you’ll find people who are eager to fill your head with information.

正直に自分の無知を認めることが大切だ。そうすれば、必ず熱心に教えてくれる人が現れる。

 

これは人生の学習の仕方を教えてくれている。

 

小さい子供は、周りの大人に

「なんで○○なの?」と自分の「わからない(無知)」を聞きまくる。

 

しかし、小学校、中学校、高校と進むにつれて、

「わからない」を言わず、黙ってノートを書いている生徒が増える。

 

これはなぜだろうか。

 

ディズニーが言うように、「わからない」と言える人は、

一生学んでいけると私は考える。

 

数学の授業を通して、「わからない」を発信できる生徒を育てたい。

この1年間授業をしてきた。

 

生徒たちの生の声やアンケートから、

「わからない」と言える生徒を育てるために大事なことを考えてみる。

 

まずは、今年度初めて私が担当した生徒たちの授業アンケートから。

 

「数学の授業中にわからないと言うことができる」への好意的な回答は、

年度当初42%から年度末88%と大きく上昇した。

 

次に、「数学を通して学んだこと」として生徒たちは次のように書いている。

 

「本当に数学が苦手で高校でもできないと思っていたけど,

ただ解いて黒板を写す授業じゃなくて,

グループになって友達にわからない問題を教えてもらったり,

自分がわかる問題を教えたり今までなら,”わからない”でつまずいていたけど

”わかならい”を”わかるまで教え合う”授業だったから,

時間がかかっても少しずつ理解できて,楽しかったです。」

 

「わからないことをしっかりと質問することや,

わからない,難しいと言うことが大切だと学んだ。

小中学校ではわからないと先生に言わずに諦めていたけれど,

高校ではわかるまで取り組もうという前向きな気持ちで授業を受けれました。

みんながわからないと言うことで,一人じゃないんだと安心し,

ゆっくりと問題に向き合えました。」

 

なぜ、生徒はこのように変容できたのだろうか。

「わからないと言えるようになった理由」を生徒に聞いてみた。

 

【課題について】

・ちょうどいい感じの問題やったら,わかる人とわからない人のバランスが良かった。

・簡単な問題は班の人に聞かなくてもできましたが,難しい問題があるとコソッと友達に「教えて」と言えました。

・解けへんようには作られてないから,自分でとけへんのやったら聞いて「教えてもらえばいい!」って思うようになった。

・急に難易度が上がる問題が出題されたとき。

・応用レベルの問題を解いたりするから。

 

【授業の構成について】

・先生が一方的に教えるような授業体制ではなく,問題を置きそこからヒントを出したりしてわからないで終わらないようにし,グループで話し合い,そのわからない点を共有し,考えて答えを導き出していたから。

・先に解き方を教えるのではなく,自分たちで最初から教えてやる。

 

【グループや学級について】

・グループになることで,誰が理解できているかわかるし,聞きやすい。

・友達(班のメンバー)がわからないところを理解し,そこを自分もわからなかった場合,いっしょに考えていたので言えるようになったのかな?って感じです。

・グループにすることにとってすぐに聞けるから。

・グループで「わからない」と言うことで誰かが教えてくれるから。

 

【教師の働きかけについて】

・生徒自身に考えさせていた。

・先生の声からがあるからとてもわからないって言いやすい。

・先生がほとんど説明をしないので,誰かに「わからない」と言うことをしないとわからないから。

・「わからないこと言えよー!」とか言ってくれるから。

・先生が「どこがわからないのか」「この人がわかってないから教えて」など具体的に声かけをしているので,どこがわからないか言いやすい。

・わからないって言わないとみんな理解したって認識されて授業がどんどん進んでいってずっとわからないままだけど,わからないと言ったらわかる人が教えてくれるからわからないって言えるようになりました。

・先生に聞こうとすると,班のわかっている人に聞いてみ?って言うところ。

・「どう?」「わかる?」って聞いてもらえる方が「勉強せな」って思えるし.わかるまでかまってくれるから「わからん」って言いやすい。

・先生の「わからないとこがあれば友達に聞いてみよう!」というのが「わからない」と言える一つのきっかけになったと思います。

・先生が最初から,答え,やり方を教えないというので,自然にわからないことを友達に教え合うというのが生まれたのでよかったと思います。

 

【その他】

・わからんかったところがわかったときに褒めてくれるから素直に言える。

・わからないとき,知りたい気持ちが強くなる。

・わからんままほっといたらずっとわからないままやって思ったときから,「うわ!これ何?意味わからん」ってなったときに先生やグループのみんなの顔を見てわからんアピールをしています。そしたら,みんな私の理解力の遅さにめげずに教えてくれて「そういうことか!」ってなったときに自分もうれしいからわからんときはわからん!どういうこと?って聞いたりしています。

 

「わからない」と言える生徒を育てるために大事なこととして次の5つを提案したい。

 

(1)わかるようでわからない問題のレベルを工夫する。

(2)先に教えるのでなく、生徒が自分たちで答えにたどり着くように授業のデザインを工夫する。

(3)小集団(ペア、グループ)での学びの機会を保障する。

(4)教師が「わからなさ」を受け入れる。「わからない」と言えるように声をかける。

(5)「わからない」ことが「わかる」ようになり、喜びを感じる場面を生む。

 

どうだろうか。

子育てや教育に関わっておられる方、企業の方、学生さんなど

様々な方のご意見をいただきたい。